嘘つき達の表の顔を垣間見る「オモテ小説」↓

無リア充

「本物だけが持っている、オーラってあるんですね。
 ワタシ、AYUが歩いてくるの、曲がり角の向こうからでも感じるんです!
 オーラが10メートル手前からはみ出してるっていうか…」

AYUの近所に住む主婦は、週刊誌記者の取材に目を輝かせながら答えた。
AYUこと、金沢あゆ美(37)の毎日は、まぶしすぎるほどに充実、している。

年の瀬迫る、午前八時。
娘と、夫を送り出した彼女の朝は、フェイスブックへの書き込みから始まる。

「また懲りずに作っちゃいました!(*ノω・*)テヘ
 欲張り娘ちゃんの今日のお弁当は、プリキュアキャラ弁。
 キュアハニーをイメージした、黄色ふんだんの卵のお弁当(๑╹ڡ╹๑)
 もちろん、ワンピースも同じくコーデ(*ノω・*)テヘ
 眠いけど、笑顔で出かけていく娘ちゃんに、またまた元気もらっちゃい
 ました!さ、みんながお出かけしている内に、エッセイ書き上げなきゃ
 _〆(・ω・` )カキカキ」

朝イチで撮影した娘のお弁当の写メ。
下に映るのは何気にマホガニーのテーブル。
スマホでこんなにも可愛く綺麗に撮れることに、最初は驚かれたものだ。
思えば、趣味と実用を兼ねた個人的なSNS記事がきっかけに、自分がエッセイストとなるとは、彼女も全く予想していなかった。

「きまぐれ主婦AYUの、キャラ弁レシピ」
「きまぐれ主婦AYUの、行った人だけが知っているモロッコキレイ旅」
などの、SNSきっかけで大ブレイク&出版された『きまぐれ主婦シリーズ』を
はじめ、さらにはそこから展開した商品も多数。
「きまぐれ主婦AYU印!絶対美肌アルガンオイル」
「きまぐれ主婦AYUプロデュース!カワイイ動物クッキー型」

エッセイの帯に実際彼女はこう綴っている。
「AYUは、自分をホント平凡な、普通の主婦だと思ってました(^_-)-☆」

だが普通の主婦の生活は3年前に一変した。
きっかけは、娘のために作っていたキャラ弁、動物弁当からだった。
フェイスブックで、『10万いいね!』が付くようになり、是非レシピ本を、という依頼が来た。レシピ本はさすがに料理のプロではないからと断り、写真集ならということで出版した。すると、その謙虚さとビジュアルの可愛さが相まって、異例の40万部を突破。そこからは、あゆ美のあらゆるソーシャル発信が商品化されるようになった。

あゆ美は、世の主婦から絶大な支持をあおぐ、カリスマブロガー。いや、もはやその粋を超え、ふとした興味ときっかけで仕事にまでつなげてしまう。神がかり的なリア充を達成した女性。彼女のように充実していることを世間では「AYU充」と称するほどになった。

日経ウーマンオブザイヤーの授賞式で、『何故成功したのか?』という質問に、彼女はこう答えている。
「んーー。。。ご縁があったから、ですね。
 私は、ほんっとうに、普通だと思います〜。
 たまたま、趣味が多くて。
 たまたま、結婚してからは旦那様が仕事を頑張ってくれるから専業主婦と
 してゆっくり生活できて。
 子どもも小学生になって、時間も出来たから、改めて身の回りを見渡して
 みたの。そうしたら、
 『やっぱりアユはコレが好き♡』
 っていうものが、溢れてた。
 そんなアユの「好き」を「いいね」してくれる人がいっぱいいたからです。
 本当にご縁。ただそれだけです〜」

料理、旅行、エクササイズにファッション。

最近では、ブログに載せた自作の親子おそろいのワンピースが欲しいという声が高まり、自分のブランドを立ち上げて販売するようになった。

誰もが信じて疑わなかった。
AYUの伝説は、永遠だと…。

「ワタシ、いいね、が欲しかっただけなのに…。」